イケヤ POANG ポエング アームチェア バーチ材突き板

昔、ひとりで暮らし始めた頃、家のリビングダイニングキッチンの部屋にあるものは、布団一式と併せて買った、洗濯機、冷蔵庫、コップ、食器一式、鍋、炊飯器、電気ポット、カセットコンロであった。

 

食事を自分でつくったことがなく、インターネット環境もなかったので、当時販売されて間もないニンテンドーDSのソフトしゃべるDSお料理ナビを使い、見よう見まねで自炊をはじめた。

椅子やテーブルまでは、気が回らなかったため、何ヶ月かは床に新聞紙をひいて、その上に食器を並べて食事していた。

 

こういう環境ははじめてであったが、自分でつくった食事はどれも美味しかったことをいまだに覚えている。

 

テレビもなかったので、近くのホームセンターで買ってきたラジオを聴いていた。

 

土曜日の昼間に聴く久米宏堀井美香の番組が面白かった。

 

何もない部屋で過ごすのは意外に心地良かった。

 

その頃、少し離れた場所にあるイケヤへ自転車で良く出掛けた。

 

店内を歩いてみて欲しくなったのが、POANG ポエング アームチェアであった。

 

店内に展示してあるものに座ってみると、すこぶる座り心地がいい。

 

手元に使えるお金があまりなかったので、何度か足を運んだが七千円の椅子を買うという決断が出来なかった。

 

当時イケヤは配送をしていたかもしれないが、基本自家用車で待ち帰る形式をとっていたように記憶している。

 

配送してくれたとしても、その料金が余計にかかるので、尚更買う決断が出来なかった。

 

私が使うことが出来るお金は、月八万円程度であったので、七千円はなかなか支払えない。

 

カードは極力使わない主義であったし、リボ払いは今まで使ったことがない。

 

そうこうしているうちに冬になった。

 

電気代のかからない暖房器具である電気こたつを買うことにした。

 

そのタイミングで、千数百円の座椅子を購入した。

 

この座椅子が快適であった。

 

椅子にもたれることが、こんな楽であったということを改めて実感した。

 

冬にこたつに入って、座椅子でゆっくりと鍋(当時ダイソーで土鍋が100円で売っていた)をつつきながら飲むビールは格別の味であった。

 

鍋には、豚肉と白菜、だしをとったわかめしか入っていなかったが、ポン酢につけて食べると美味しかった。

 

与えられて当たり前のように食卓に並ぶ豪華な食事を食べるより、自分でつくった質素な料理の方がおいしいのは何故なのだろうか。

 

たまに自分のお腹の容量以上の食事がコース料理などで出てくるときがあるが、おいしくないと感じる。

 

炊き立てのご飯があれば、少量の漬物と味噌汁、僅かな魚の切身があれば十分である。

 

話が少しそれたが、ポエングの椅子は約十年後に購入した。

 

たまに座って本を読んだりしているが、肘掛けの木の質感が良い、座り心地も良い、リラックス出来る椅子である。

 

酷使していないので、死ぬまで使えるだろうと思っている。